アンジールは、出逢ってからずっと、最期まで俺の目標だったんだぜ?

「アンジールには、まだまだだ、とか言われそうだけどさ」

ザックスはそう言って苦笑した。



夢を持て。そして、決してソルジャーの誇りは手放すな。
あんたが何度も何度も俺に言ってくれた言葉。

その言葉が、俺を最期までソルジャーで、俺自身でいさせてくれた。


あんたがいたから、ここまで来れた。
ほんとに、感謝 してるんだ。



「ありがとな、…アンジール」

そう言った後、照れ隠しの様に顔を背けて頬を掻くザックスに、アンジールは何も言わずにただ、優しく微笑んだ。













そして、やがて時は過ぎ、風が吹き。
一片の羽根を、遠い遠い空へ連れ去る。


「なあ、アンジール、…俺、英雄になれたかな?」


それは子供の頃から描き続けて来た夢。
信じていれば必ず叶うと、決して手放さなかった、憧れにも似た、壮大な夢。

ザックスはアンジールにそう問うた。まるで無邪気な子供の様に。
その彼の姿が、アンジールにとっては何よりも愛しく思える。


「…ああ、なれたさ」


ザックスの黒髪をくしゃっと撫でる。既に姿形を失っている互いの体が触れ合う感覚。
もう二度と、離れる事無くこのままで。







「…お前に出逢えた事が、俺のこの世での一番の誇りだ」















白い片翼で、ふわりと空へと舞い上がる。ザックスはアンジールを見上げて叫んだ。

「なあアンジール!!!俺にもその羽根、つけてくれよ!!」

この空を飛びたい。何処までも共に、自由に。

しかしアンジールは首を振る。




「お前はもう、持ってるだろう?」




こんな片翼ではない、
完璧な、天使の翼を。




「え、そうなのか?そんな感じ全然しないんだけど」

自分の体を見回しながらうろたえるザックスに、アンジールは苦笑する。


「さっさと来い。でないと置いてくぞ、『子犬のザックス』」
「あー!また言ったな!俺はもう子犬じゃないっての!!」









そして風は、二人の天使の存在をも、遠い遠い、空へと連れ去る。


もう二度と、何にも縛られる事のない、永遠の自由の世界へ。



















「俺さ、きっとあんたが迎えに来てくれると思ってたんだ」
「どうしてそう思った?」



だって俺、あの時言っただろ?



















「あんたの翼は、『天使の翼だ』 って」

















■END■






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巡様ステキな小説をありがとうございました(号泣)